2025年8月19日 政治塾『いわて政友会』通信vol.4のご案内

政治塾「いわて政友会」通信 第4号

原敬の国際協調路線に学ぶ

 戦後80年の今年、戦争や核兵器に関する報道や発信が多くなっています。被爆者団体協議会が昨年ノーベル平和賞を受賞したことが、追い風になっています。また、戦争を直接体験した方々が少なくなり、より努力して、戦争について知るべきだ、知らせるべきだ、という意識が高まっています。さらに、ウクライナやガザなどで実際に悲惨な戦争が起きていることと、国際協調に反する論を唱える政党や政治家が目立っていることも、問題意識を高めています。

そのような背景の下、反省を明言する石破茂総理の戦争観に対して、自民党内から批判の声が上がっています。「保守たる者、過去の戦争は肯定し、反省や謝罪をしてばかりではならぬ」という考えに基づく批判です。

 ここで参考になるのが、原敬さんの国際協調路線です。

 原敬さんは、保守系の政治家ですが、シベリア出兵に反対しましたし、第一次世界大戦後の軍縮に賛成でしたし、英米との協調、中国との親善を、基本にしていました。鉄道を全国に広げて、地方を開発するということが基本政策でしたが、それは、植民地に頼らない、内需拡大型の経済成長路線です。平和主義はサヨク、好戦的なのがホシュ、という単純化は、あてはまりません。

 そもそも保守は現実的です。戦争が不可避かどうかは相手によりますし、交渉のやり方次第でもあります。また、戦争は思惑通りに進められない場合が多く、政策としては不確実性が高すぎます。犠牲が拡大しがちで、お金も莫大にかかります。保守は慎重でもありますので、本質的に戦争には消極的です。

 原敬さんの国際協調路線は、幣原喜重郎、石橋湛山に受け継がれました。原敬首相の下、ワシントン軍縮会議に派遣された幣原喜重郎は、原敬亡き後、外務大臣を長く務め、国際協調路線「幣原外交」を進めました。そのような幣原喜重郎が、戦後、総理大臣として、日本国憲法第9条の平和主義を採用したのでした。そのように、戦前と戦後を通じて、国際協調を唱え続けた保守系政治家には、戦前、植民地に頼らない「小日本主義」を唱えた石橋湛山もいます。

 国際協調路線は、人の命を大切にします。人種や民族にかかわらず、平等に人間扱いすべきと考えます。このような人権重視は、いわゆる左翼的ですが、保守的な価値観からも、「人の道」として、人命や平等は重視されます。基本的人権の核心である「個人の尊厳」は、保守においても決定的に重要なのです。(終)

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