日本政治の傾向と対策
政治の本務は、集団の持続と発展のための、「情報の共有」と「集団的意志決定」です。
国政であれば、まず、日本の内外の状況を把握し、特に危機的状況を見つけ、その認識を共有する。そして、その危機的状況の克服を多数意見として形成し、行動に移す。これが基本です。
地方政治でも同じですし、どんな集団でも、これが基本です。まず、内外の状況を把握し、自分たちにとって何が問題か、認識を共有する。そして、やるべきことを多数意見として形成し、行動する。
この、「情報の共有」と「集団的意志決定」を、うまくやれる国や集団は、政治が良いということです。「情報の共有」のための情報処理や伝達、「集団的意志決定」のための多数形成で、集団に貢献できる人が、良い政治家です。
原敬が、政友会総裁から総理大臣へと活動していた中身を見ると、やっていたのは、国際社会や経済の動向と、日本の経済・社会の現状を人々に知らせること、そして、そこで必要になる産業政策や地方振興策への、賛同者を増やしていくことでした。日本の状況を知りたい・知らせたいと強く思い、日本の維持発展に必要な多数派形成の労をいとわない、愛国心が感じられます。
民主主義が優れているのは、集団が質の高い情報を持つためには大勢で作業した方が良く、しかし多数でも間違うことはあるので、念のために少数意見を尊重することができる仕組みだからです。また、集団の行動が成功するためには、より多くのメンバーがその気になっていることが大事なので、大勢の納得を得られるような仕組みであるから、民主主義は優れているのです。
今日の日本政治について、国内外の状況を国民的に共有できているか、必要な政策について国民の多数が納得できるように意志決定が行われているか、と考えると、かなりおぼつかないと言えるでしょう。そのことこそが、日本の危機的状況の最たるものです。そのことを情報として国民的に共有し、改めて国際情勢や経済情勢、国民生活の現状について認識を共有し、国民の多数がその気になるような対策を決めて実行する、政治の新しい体制が求められています。
(終)