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岩手の人口密度―過疎というより「適疎」

岩手の人口密度―過疎というより「適疎」

「人口戦略会議」が10年ぶりに「消滅可能性自治体」に関する発表を行いました。人口減少問題への関心が、あらためて高まっています。テレビの情報番組でも大きく取り上げられていますが、藻谷浩介さんも登場していました。地域振興の専門家として第一人者の藻谷さん、日本で過疎地域と呼ばれている所は、世界と比べれば、結構、人口密度が高い、と指摘していました。以下、藻谷さんの論旨に、様々な統計資料からのデータも併せて、説明しましょう。

普通の人口密度の代わりに、人が住めない山岳地帯などを除いた、「可住地人口密度」を使います。日本の都道府県は、この密度が低い順に、北海道241、秋田319、岩手345となりますが、この密度は、イギリス289、イタリア297、ドイツ346と同じくらいで、過疎というより「適疎」ではないでしょうか。岩手県の可住地面積当たりの人の少なさは、ドイツ全体とほぼ同じなのです。日本全体は1,109で、これは世界10位の高さ。日本の中で都道府県1位の密度は、東京都9,529です。これは、香港7,096より多く、シンガポール10,337くらい。シンガポールも出生率の低さが問題ですが、人口密度が高すぎるのではないか、と藻谷さんは述べています。

東京都の中でも、豊島区は23,182で、1キロ四方にこの人数が住んでいるというのは、「超過密」と言えるでしょう。イギリス、イタリア、ドイツと比べて、けた違いの数字です。一方で、岩手県で一番人口が少ない普代村は、219。こちらの方が世界標準からすれば「適疎」で、生活をするにも仕事をするにも、このくらいの疎(まば)らさがちょうど良いのではないでしょうか。

藻谷さんは、2,000~3,000人くらいの地域が、生活や仕事の単位としてちょうど良い、と言います。地方創生で全国一有名な島根県海士町がそうですし、岩手県普代村もこの規模です。様々な事情で、過密な都市にいなければならない場合もあると思いますが、事情が許すなら、「適疎」な地方がおすすめです。

岩手県の人口の少ない町村は、転出超過も多いですが、転出超過先は、その多くが岩手県内の市か隣県の市で、それは消滅への道ではなく、人口が広域化しているのだと言っていいと思います。道路など交通が便利になり、住所は町村から移しても、週末は実家に帰るとか、地元の祭りには参加するとか、生活と仕事、そして学習も広域化しているので、それに対応する地方行政が求められます。(終)

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