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岩手県の転出超過の傾向と対策

岩手県の転出超過の傾向と対策

前回、岩手県の出生数の減少について述べました。人口減少問題は、出生数の減少と、転出超過から成っていますので、今回は転出超過の話です。

地方から都会への人口の流れは、一定ではなく、経済状況によって、変動します。高度成長時代の1960年代と、バブル景気の1980年代は、人口の東京一極集中が進みました。一方、オイルショックや不況の1970年代と、バブル崩壊後の1990年代は、都会の経済の落ち込みが激しく、地方経済の落ち込みは比較的浅かったので、人口には地方回帰の傾向がみられました。

1995年、バブル崩壊後の経済対策や民間投資の増加で、地方の景気が都会よりも良かった時期ですが、岩手県の転出超過は史上最少の329人でした。2000年代、地方の景気が悪化し、都会の景気の方が良くなり、岩手県の転出超過は増え続け、2007年に6,709人(ここ35年で最大)になりました。

 しかし、東京五輪関係の投資で首都圏の景気が上昇し、2018年、岩手県の転出超過は5,215人、今世紀最大となりました。2018年は、復興事業から半導体産業集積に進む時期で、岩手県の有効求人倍率が1.46と今世紀最高(2007年には0.73、リーマンショックの2009年には0.34)だったのですが、東京が2.13と、やはり今世紀最高でした。地方ががんばって、産業・雇用の状況が良くなっても、国が、東京を優先するような経済財政政策を同時に行えば、地方の転出超過は増えてしまうのです。

 東京五輪効果が収まり、コロナ禍もあって東京の景気が悪くなると、岩手県の転出超過は2021年の2,738人にまで減りましたが、2022年に人流が戻り始めると、4,113人に増えてしまいました。

国は地方創生の目標として、毎年10万人くらいある東京の転入超過を、ゼロにすることを掲げています。それを可能とする地方重視の経済財政政策を国が実行し、地方が産業・雇用政策をがんばれば、東京一極集中に歯止めをかけることは、可能なのです。(終)

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